四時随順

俳句とエッセイ / やまだみのる

  • 猫の目のごとくに冬日ひろがりぬ

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    猫の目のごとくに冬日ひろがりぬ  みのる

    昭和25年、私が小学1年生のころ「たま」と名づけた茶トラ猫を飼っていた。両親に姉二人兄一人と末っ子の私の6人家族、戦後の貧しい生活の中で兵隊経験のある厳格な父がなぜ仔猫を飼うことを許してくれたのかはよく覚えていない。

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  • 門波蹴散らせていかなご船戻る

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    門波蹴散らせていかなご船戻る  みのる

    今年は2月26日に、兵庫漁協のいかなご漁が解禁になった。

    ここ二年ほど極端な不漁が続き、解禁日も3月7日と例年より1週間以上遅かったけれどやっと回復したのかと喜んだ。ところがたまたま昨日、明石漁港の糶を吟行したので漁師さんに聞いてみたら解禁日は豊漁であったけれど二日目には落ち込んで糶り値も初日より高騰しているという。

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  • 蝋梅に綺羅の海光とどきけり

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    蝋梅に綺羅の海光とどきけり  みのる

    今から三十年ほどまえ四六時中俳句脳だったころの話である。

    週末の朝、いつものように須磨浦公園へ吟行に出かけた。その日は温かい玉日和で須磨の海は眩しい日差しを弾きながら穏やかに縮緬波を畳んでいた。そろそろ観光ホテルの庭の蝋梅が咲いているころだと足を運ぶと既に先客があった。その人はじっと蝋梅と対峙して微動だに身じろがない。

    それが恩師の紫峡先生だとすぐに気づいたけれど真剣な眼差しに近寄りがたいものを直感したので声をかけずにそっとその場を離れた。その時に見た先生のお姿はいまも瞼の裏に鮮烈に焼きついている。

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  • 利酒に御代りはなし蔵めぐり

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    利酒に御代りはなし蔵めぐり  みのる

    二月の吟行句会に備えて灘五郷の酒蔵を下見した。

    阪神の魚崎駅を降りてお目当ての菊正宗酒造記念館まで「清流の道」と名づけられた住吉川沿いの堤を歩く。とても温かい日だったので水量は少なかったけれど亀甲模様に敷かれた川底の石畳を走る小気味良い水音はさながら春の歌を奏でているようだつた。

    開館時間まで少し間があったので酒造記念館の前で待っていると大型バスから降りてきた韓国人と思われる団体が賑やかに到着、なんだか圧倒されてしまって思わずあとづさりしてしまった。館内の受付のお嬢さんの話では最近は日本人の見学者はほとんどなく韓国からの観光客がほとんどだという。

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  • 浜焚火命ひろひし話など

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    浜焚火命ひろひし話など  みのる

    神戸に住み古りて三十年を超えた。職場の先輩に自称釣名人がおられ、せっかく海の近くに引っ越したのだからと誘われて須磨や垂水の波止釣りにもよくでかけた。当時はまだ浜辺で魚網や若布を干しておられる海人の姿も見られてお喋りにも付き合ってもらえ句を拾うことができた。

    近代化が進むのはよいことかもしれないけれど、そうしたよき風情をことごとく犠牲にしてきている。ヨーロッパの建物や文化のように、古きよきものを大切に守りつつ…という精神は残念ながら日本には乏しいと思う。俳句もまた然り、死語と化していく季語があとをたたないのは悲しいことだと思う。

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